2010年7月12日月曜日

JPA近畿研修会 その4 質疑応答【後半】

もともと急遽参戦くださった小笠原さん。
講演をいただく予定ではなく、この後の懇親会でお話お伺いできれば~の予定だったのですが、
質問に答え出したら出るわ出るわ。
とても豪華な研修になりましたよ。

以下、スーパー小笠原タイムの詳細です。


#レッドの質問を受けての回答。

小笠原:まず。中にいると、なぜはやぶさだけが?という気はします。「かぐや」。
素晴らしい映像を届けてくれた。衛星屋からして優等生です。最初から最後まで優等生。
ホイール1個故障したけど、4個あるから問題ない。もう衝突の時まで優等生。

「はやぶさ」は生い立ちから劣等生。こんな事書かれるとメーカーとしては大変困るけど、
サイトにもはやぶさの故障・異常は山盛りに書いてるから問題ない。

ありとあらゆる物が思ったとおりに動かない。ああでもないってやってるうちに壊れるし。
普通、衛星はシングルフェイリアとして作る。1個壊れても問題ないように設計する。
「はやぶさ」はダブルフェイリア、さらにフェイルしてゆく。

とどのつまりは通信途絶、太陽電池パネルに光が当たらない、バッテリがが死ぬ、
メモリはオフする、普通は、「はやぶさ」は終わりなんですね。にも関わらず復活する。

HBTTEでは擬人化されたはやぶさ君が自ら立ち上がった様に描かれていますが、
あれは・・・です。(会場笑)

飯山:アレは演出。

小笠原:あれは、あれを支えた何十人もの技術者が、地上にいて、毎日あくせく、
「はやぶさ」に対してああしたらこうしたらと次々と考えながら指示を与えていたから。

皆さんも知らないうちに、擬人化されたはやぶさ君のがんばりと、
それを支えた地上の人たちが「いるんだろうな」と。こんなに色々故障しても、
何とか地球に帰ってきたんだから、と。
そこになにか、日本人固有の判官びいきが一緒になったのかな。

メーカーからすると、「はやぶさ」くらい手間のかかった衛星はありません。

飯山:3年も延びちゃうし。

小笠原:その間技術者は貼り付けですからねぇ。まぁ苦労した息子ほど可愛いって言うじゃないですか。結局最後はそこにいたかな、という気がします。必ずしも優等生がいい子ではなかったのかなぁ。正直思います。

技術者の物語が今3話ですが、4話5話と出していきますので。まだ中で起こった事が出てきますんで。もう会社としてもどんどん出してもいいだろうと。もう時効の話もあるんで。生の技術者の声を聞いていただいて。探査機を支えた人の心。最後は結局そこに行くんだろうと。

色なんですけど、流れ星屋なので。スペクトルが公開されてるのはNASAのDC8。ただし何のコメントもない。読み解かないといけない。最初は青い。緑から青い部分に色んな輝線が立ってる。窒素・酸素。衛星の中の色の物質。アルミや鉄。これが色んな輝線になってる。だんだん薄くなってくる。

一番最初に「はやぶさ」から離れていったのは太陽電池パネル。次はサンプラー。次アンテナ。大体その辺までは分かります映像見れば。そっからは爆発するんで分からないですが。ただ、1個だけ分かるのがある。ターゲットマーカー。1個残ってる。NASAの長焦点ので見ないと分からない。ゆっくり見てください。
実はターゲットマーカー作ったんです。

最後、ふらふらしてるみたいに写ってる。あれははやぶさの一番残ったいくつかのコンポーネントがそれぞれ大気抵抗の受け方が違うんで、先に行ったり遅くなったりしてる。

飯山:それが波打ってるように見える。

小笠原:位置が違うんですね、上下で。それが連なって見えると、波打ってるように見える。社内でも色んな意見があって、皆自分のコンポーネントが大事なんでw
バッテリーの人は、最後に生き残って、飛び出すのがバッテリーだと。硬くて重い。
バッテリーに追い抜かれる明るいものは、タンクでしょうね。
皆それぞれ思いがあってw自分のだって言ってます。

最後にカプセルが離れて行きます。もうプラズマ発光じゃなくて、カプセル本体の熱輻射。

NASAのスペクトル見ると、後半輝線はありません。熱輻射の連続スペクトルだけが残ります。
だんだん赤くなっていく。数千度も下の方なので。

飯山:最後なんだっけ。伝えたい事。なんでもいいですけど。w
いや、全部。どこを切ってもそれなりに、人を説得できる物だとおもうので。
お話する人が自分が感動した部分をお話すれば。

小笠原:もうひとつだけ。この映像。後にも先にもたった一回です。おそらく二度と会えません。
本来「はやぶさ」は本体は地球から逃げていくはずだった。こういう映像にはならない。
普通はカプセルだけが入ります。「スターダスト」もカプセルだけ。「ジェネシス」は失敗しちゃった。
1個だけカプセルが落ちる映像しか今後とも出ないと思います。
この映像しかない。一生に一回しかない。

レッド:これを機に今後落としてみようとかw

小笠原:もったいないですよwww衛星使いたいんです。ホントは。「はやぶさ」だって使いたかったんですよ。もう計画は立てました。この小惑星なら行けそうだって立ててましたよ。もうずっと前。2007年の時には明らかに立ててました。

飯山:もともとは2007年に帰ってきたら離脱して、次の星へ行くという。

レッド:耐用年数的には何年くらい?うまく次のターゲットにいけたとしたら…

小笠原:普通、設計は2003年に上げて2007年まで。4年間。あとは壊れるまで。

わし:以降は動けばラッキー。出来るところまでは運用を続けよう、という事?

小笠原:そうそう。

笹川さん:微粒子発見の報道があったけど、その辺の判断はどうなんでしょ。

飯山:わかんないス。僕は打ち上げから帰還までの間で、たとえばフェアリングの中の埃の具合とか何も知らないので。混入しうるのかし得ないのか。なんとも判断できないんですが。入ってたらいいですね、イトカワのだといいですね、くらい。

今やきもきしても何もないですよ。まぁ来年の5月の地球惑星合同学会あたりで発表があるんじゃないすか。

だってもしイトカワのだったら、イトカワのです、ってすぐ言えないですよ。とりあえず論文書いて、オレの発見だーって確定するまで何も言えないでしょ。小笠原さん、言えます?w

小笠原:こればっかりはねぇ。恐らく専門家は、1mmの粒があれば見た瞬間に分かります。だってイトカワから持って帰ってくるのは、LLコンドライト。ありきたりの隕石の粉です。でも(報道の)あのサイズでは目視の判断は出来ないと思います。
こっから先はかなり長い分析が。

飯山:やっぱり同位体比とらないと結論でないでしょうね。

小笠原:まだ収納された箱の1つしか開けてませんよ。2つあるんです。1回目にタッチダウンした時のやつは下にあるんで、まだ開いてないんですね、2回目のタッチダウンしたのが今回の開いたやつです。だからもう1つ開けないといけない。

#このあたりのお話は松浦さんブログのこの記事を参照されたし。

飯山:2回目のタッチダウンは1秒くらいしか留まってなくて弾丸が出てないと思われるので、そう簡単に入ってる訳がないと思ってる。

小笠原:1回目の方が入ってる可能性が高いと皆思ってる。1年後は長くない?

飯山:まぁ、年末くらいのサイエンスかネイチャーに載れば早いほうかな、って気はしますね。

小笠原:今回の粒の話はリークみたいですね、朝日にスクープされてその後記者会見、当日12時30分にはじめて記者呼んだんですから。

飯山:誰か院生が誑しこまれてゲロさせられたんですよ、今頃、大目玉食らってますよ。w

小笠原:あんなのホントは今頃でるはずがない。

黒星博士:小笠原さんの関わられたところはどのあたり?

小笠原:実は「はやぶさ」という完成品の「格好」が無かった頃からやってるんで、限定的にどこ、ってのは無い。初期の設計の段階で、イトカワの姿を撮ったカメラ、それから先ほどちょっとお話したターゲットマーカー、というかそんな名前も無かった。

とにかく、小惑星の表面、重力のほとんどないところで、高度40mから見えるものを落としたい。ただし反発しちゃだめ。それだけ言われるわけですよ。

フラッシュを作ったり。あとは軌道運用したり計画を立てたり、姿勢を制御したり。

飯山:要するに全部ですw

小笠原:全部とは言えない。たとえばカプセルは違う会社だし。

飯山:たくさんありすぎて一言では言えませんね。じゃあまあ後は、カメラの無いところでしゃべりましょうか。


という事でレッツ呑みにけーしょん~

2 件のコメント:

  1. maiplanetariumです。
    ちょー詳細レポありがとうございます!
    SubaruTakashimaさんよりすごい(笑)
    ここまで書くのってレコーダーで撮ったりするんですか?

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  2. to maiplanetarium
    どーいたしまして(笑
    一応、ビデオも回してたんですよ。
    当初は撮影して、OKでればようつべにでもアップして~
    と思ってたんですが、「公開前提だとしゃべれない事もあるよ」と言われたので、アップしないから、という条件で撮影させてもらいました。

    流石にこの分量はメモしきれませんwww
    そう考えると、レポートされてる方々ってつくづく凄いなあと感心してしまいますね。

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